尊厳とは何か?難しい話の難しくない話。
しゅり
40代
心理カウンセラー
1児のママ
こころ循環サポーター心理カウンセラー高木です。
私が社会人になりたてだったり
子育てに翻弄されている時だったり、
仕事が面白くてたまらない時期には
全く想像もしないものだなぁと思うのは
「尊厳」という言葉です。
でも一度人生につまづいたり、孤独に陥ったり、
命の先行きが見えなくなった時
この言葉と向き合うことになります。
前者は希望にあふれて元気で幸せ、もしくは充実している時
後者は絶望し不安で生きている意味を
見いだせなくなっている時とも言えます。
オランダで緩和ケアを受ける患者で安楽死か
自殺幇助で亡くなった人達の
死亡診断書を書いた医師の57%が患者の死を早めた理由に
「尊厳の喪失」を上げているそうです。
尊厳とは何でしょうか?
「尊厳」という言葉の意味は、
辞書では「とうとくおごそかなこと。気高く犯しがたいこと。またそのさま。」とされています。
それってつまりどういうことを指すのでしょうか。
心理学者エリクソンによると
成人期における心身の健康の基準には
・子孫を生みだすこと
・生産性
・創造性
という新しい存在や制作物、観念を生み出すことがあり、
これらを包括するのが
『生成継承性generaritivity』 という言葉で
表されるとされています。
ディグニティ(尊厳)・セラピーという緩和ケアの手法に、この『生成継承性』について
ケア者がケアされる方のインタビューを丁寧に行い、何度も推敲を重ね、最終的には
本人の承認を得て完成させる、というものがあるそうです。
・あなたの人生において、特に記憶に残っていることや
最も大切だと考えていることはどんなことでしょう?
あなたが一番いきいきしていたのは、いつ頃ですか?
・あなた自身について、大切な人に知っておいて欲しいことや
覚えておいて欲しいことが何か特別にありますか?
・あなたが人生において果たした役割のうち、
最も大切なものは何でしょう?
なぜ、あなたにとってそれは大切なのでしょう?
・あなたが人生で学んだことで他の人に
伝えておきたいことはなんですか?
(対話と承認のケア~ナラティブが生み出す世界~宮坂道夫著より)
これらはディグニティ・セラピーのインタビューで用いる質問の一部です。
カナダの精神医であるチョチノフは
このセラピーが死を目前にした人の尊厳感の維持に適応できると考えました。
質問を眺めているとそこに貫かれるテーマは
ケアされる人の『生成継承性』を表していることが分かります。
その人の命が何を生み出したのか。何を次世代に継承しようとしているのか?
他の誰でもなくその人本人がどう捉えているのか。
尊厳とはつまり、自分の命が尊くかけがえのないものであることを実感し、
その命が何を生み出しこの世界に何を残していくのかを
自身や周りが知る機会を得ることなのではないかなと私は思います。
そしてそれは死を前にしなくても、
大切な誰かとシェアすることができたら、
どんなに幸せなことだろう、と思います。
この原稿を書きながら隣でスマホをいじっている夫に
上の質問をしてみたら
「いきいきしていた時期…うーん10年前くらいかなぁ…」
と答えました。「それはなぜ?」には答えてくれなかったけれど
(結構そこが肝なんですけど)「丁度娘が生まれたころだね。」
と言うと「フフフ。」と笑っていました。
本当は仕事の事を思い浮かべていたかもしれないけど、
娘はとても嬉しそうにしています。
すぐに答えるのは難しい質問ですが、こうして投げかけておくことで脳は答えを探してくれます。
深追いせずにいつの日か教えてくれる日を楽しみにしておきたいと思います。
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